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映画“OLD“からみる人生とは※ネタバレ含む

久しぶりに映画のレビューをしに戻ってきた

今日はアマプラに新しく入ったOLDを観た

なかなかに考えさせられる映画だった

https://eiga.com/amp/movie/95209/

 

結論からいうと、かなりいい映画だった

かなり印象深い映画だった

とてもアバウトで簡単なあらすじは、

「めちゃくちゃ老いが速く進むビーチに閉じ込められた」

という感じ

 

※以下ネタバレ含む感想&私なりの考察

こういう時間絡みの映画は数多く観てきたが、(思いつく限りのおすすめは「ベンジャミンバトン」「僕は明日、昨日の君とデートする」等)このような映画をみるとまず大前提に、いかに「時間」、大きくいえば「人生」が有限で大切なものであるかを考えさせられる

この映画では更に、「老いが速く進むビーチ」というパニックストーリーの中で多くのことを風刺していると考える

 

作者はまず、ビーチに閉じ込められたキャラクターたちを通して「幸せとは何か」「幸せの在り方」を考えさせたかったのではないだろうか

ビーチで老いが進んでいく中パニックに陥るキャラクターたちは、ストーリーが進むにつれてそのパニックに加え各々が持つ疾患の症状も現れてくる

ビーチで頭がおかしくなり人を殺めてしまった社会的地位の高いチャールズは、自分の罪がバレて自らが築き上げてきた地位が下がることを恐れて更に周りへの八つ当たりが激しくなる(チャールズにとっての幸せは地位)

 

メイクをばちばちに決め込んだ、チャールズの妻クリスタルも、チャールズ同様老いが進むにつれ自分が醜くなっていくことに耐えられず狂っていく(クリスタルにとっての幸せは外見/美/地位)(まるで荒地の魔女です)

老いが進んでいく中、クリスタルはマドックスに、ぽつりと自らが若かりし頃の恋愛の話をする

自分がマドックスと同じような歳のとき(20代あたり)に自分は恋人がいたが、「その彼はブサイクだったから」「隣を歩いていると自分まで不恰好だったから」、という理由で別れたという

クリスタルは老いていく中で、チャールズではなくその元恋人に会いたがるようになっていた

 

仲違いで、離婚前最後の家族旅行にきたカッパ一家

夫婦中は最悪で、旅先でも喧嘩

そんな2人は、ビーチで年老いてもう最期だというときに、お互いがお互いの幸せだったことに気づく。「どうして喧嘩していたのかも忘れた」「どうしてこのビーチから脱出しようと思っていたんだっけ」「ここは美しい」と穏やかに話す年老いた旦那ガイに、「どうでもいいわ」と微笑む年老いた顔の妻プリスカ。ガイは目が見えなくなっていた。プリスカは片耳が聞こえなくなっていた。だがそんな2人の最期は本当に穏やかで、暖かいものだった

 

幸せの定義とか、決める必要はないしそこに答えはない

なぜならそれは人それぞれだから

だけど、常に自分が何に幸せを感じて、どんな人といるときに幸せを感じて、っていう感情はこれから先どんな立場になろうがどんな状況にあろうが忘れないようにしたい。自分の中で、ブレない「幸せの核」をしっかり持っていたい。その核があれば、この映画で悲惨な最期を迎えた人たちのようにはならないから。

地位や外見の美、たまにはそういったことに自己肯定感が上がり幸せだと感じることがあるかもしれないが、それはただ承認欲求が満たされたことによる偽りの幸せで、本当の幸せとは言えないのだと思う。このSNSが著しく発達してしまった世の中では、そういう承認欲求で満たされた感情が幸せだというふうに思ってしまいがちだから、なんというか、やるせない

SNSの恩恵を受ける世代だからこそ、幸せを見失いやすいというのは、これからもいろんな方面で問題になっていくだろう

 

結局この物語のオチは、ホテルが実は実験施設で、用はビーチに閉じ込められた人たちは新薬の実験台だった、というものだ。(シナリオが気になった方は、完全ネタバレページをみるなり映画をみるなり)

このオチは私的に、動物実験を連想させた。今でこそ動物実験をしない某いい匂いのブランドがあったりするものの、世界から動物実験完全撤廃、となるにはきっと程遠いのだろうと思う。動物実験をしないといけないから、撤廃には至らない。ただその恩恵は全て人間にしか授与されないもので、動物たちにはなんのメリットもない。だが、だからといって人間で実験するなんて倫理に反しすぎていると思わざるを得ないし、そうなると自分の意見は偽善にしか聞こえないし、ただの一般人に何かを変えられるとは思わない。考えの堂々巡りだ。そうなると、最後に捕まった実験施設の人たちは完全悪者扱いだが、ある立場からみると正義のヒーローなんだと気づいた。彼らは疾患のある人間を集めビーチで実験を繰り返して、その結果をもとに新薬を開発し、その新薬で人を救ってきたわけだから。この映画の視聴者としては、実験施設の人は悪者だが、彼らの薬で救われた人たちにとっては彼らは英雄であるということだ。そんな二枚舌で語られるものなのだ。

 

時間は有限で、少なからず多からずこの世界の全ての人に与えられたもの。ただ多くの場合、この事実を人間は忘れがちだ。

老いが速く進むビーチで、大人になることへの戸惑いや、自分が着々と死へ近づいていることがわかってこそやっと浮かんでくる後悔、想い、思い、会いたい人、仲直りしたい人、離すべきではなかった人、そういったストーリー構成の中で、人生と時間と愛、幸福論について深く考えた。大切な人と観たい映画だ。

 

nesumerb